現在会社を経営しており、体力的にもきつくなってきたので社長をそろそろ引退しようと考えているが、現時点で親族の中に引き継ごうとしている人がいないため、従業員や幹部に会社を継いでもらおうと考えている。
今回はそのような社長の方に向けて、従業員が事業承継をするメリット・デメリットについて解説していきます。
この記事の目次
従業員を選ぶメリット
従業員が事業を承継する場合、以下のようなメリットがあります。
会社のことをある程度把握している
ある程度ベテランの従業員に承継するはずですので、新しい経営者は自分の携わっている業務やその周辺の業務に関してはかなりの知識があると思います。
そのため、何もしていなかった親族の人よりは後継者として適していると判断できます。
また、社長と長い間共に働いていることから、承継後も円滑に助言を行なったり近況報告を聞いたりできるため、承継後の社長の不安要素をある程度払拭することができると考えられます。
会社の社風や文化を維持できる
M&A等で経営者が第三者に変わると、企業の雰囲気や社風が失われてしまうケースがほとんどです。
一方、従業員が承継する場合、もともとその会社に長い間いた人が経営者になるわけですので、それらが失われてしまう可能性は極めて低いです。
社長としては、自分と人生を共にしてきた会社が別の文化に染まってしまうのは非常に寂しいことだと思います。
そのため、その会社の文化がある程度維持されることは大きなメリットだと考えられます。
従業員を選ぶデメリット
経営の知識が必ずしもあるわけではない
各従業員は実際に会社を経営しているわけではないので、自分の業務内容については十分な知識を持ち合わせていますが、経営の知識が必ずしも備わっているわけではありません。
経営者はその会社のほぼ全ての業務を把握している必要があるため、1人の従業員がその会社を引き継いで経営者になるというのは容易なことではありません。
多額の資金が必要である
一般的に、従業員や幹部が会社の経営を引き継ぐ際には、その従業員が会社の株式を社長から買い取ることになります。
会社の規模にもよりますが、数千万単位の資金が必要となるケースもあります。
しかし、1人の従業員がこの規模の額の資金を用意することは容易ではありません。
また、社長から会社の株式を買い取るのに必要な資金(その会社の価値)は、黒字の会社であればあるほど高くなるため、安定している会社の方が、従業員への引き継ぎが難しくなります。
一応、事業承継税制という制度を利用することによって、贈与税を100%猶予した状態で贈与することが可能となります。
株式を売るのではなく、この制度を使い贈与すれば、資金的な問題に関してはある程度カバーすることができます。
この制度を適用するためには、いくつかの条件や少々面倒な手続きがあります。詳しくは以下のページをご覧ください。
事業承継税制の概要をわかりやすく解説! – 会社即売.com
従業員が返済義務というリスクを伴う
会社が金融機関から借り入れを行なっていた場合、中小企業では社長自身に個人保証がついているということが少なくありません。
ほとんどの場合、事業承継によって社長が交代するときは、借り入れの保証人も交代しなければならないため、新たな社長は少なからずリスクを負うことになります。
そもそも候補が少ない場合がある
中小企業においては、大手企業と比較して従業員の数が十分でないケースがあります。
数少ない従業員の中で、経営者としての素養と意志を持ち合わせている人はそんなに多くはないはずです。
2016年度版「中小企業白書」によると、2016年に利益率が10%以上の状態で廃業した企業のうち、約80%が従業員数が5人以下、約96%が従業員数20人以下となっています。
高収益ながらも廃業した企業の多くは実際に人数が少ないのです。
事業承継できる従業員がいない場合
従業員が事業承継する以外の方法も存在します。メジャーなものはM&Aによって第三者へ会社(の株式)を売却するという方法です。
M&Aとは、いくつかの企業を一つの企業に統合したり、ある企業が他の企業の株式を買い取ったりすることを総称して言います。
現在、この方法による第三者へ事業継承も一般的になりつつあります。会社売却に関する情報は以下のページにまとまっていますので、ご確認ください。
おわりに
この記事では、従業員が事業承継する際のメリット・デメリットを説明してきました。
従業員へ会社を託すかどうか、また誰に託すかを考えるときの判断材料にしていただければと思います。
この記事を読んでくださった皆様には、是非とも第三者へ会社を売却するという方法もあるということを持ち帰っていただきたいです。
後継者としてふさわしい人物が親族や従業員の中から見つからない場合に非常に有効な方法だからです。
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