・売り上げ不振のため自分の代で卸売業を廃業してしまいたい
・卸売業を経営している父親が急に亡くなってしまったため廃業手続きをしたい
このような理由で卸売業の廃業を検討されている方に向けて、今回は卸売業を廃業するまでの具体的な手続きとその時の注意点をご紹介していきたいと思います。
とはいえ、卸売業を廃業するためには、買掛金に関する取引先との交渉だけではなく、複雑な法的書類の提出が必要です。
そのため、卸売業の廃業を検討されている方は、一度卸売業を売却することも視野に入れてみて下さい。
売却ならば廃業と違い、卸売業を簡単に手放すことができますし、何よりも金銭的なメリットが大きいです。
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この記事の目次
卸売業の廃業件数の推移を表したグラフ
このグラフは、中小企業庁が発表しているデータを用いてわたしが作成したグラフです。
このグラフは日本国内において廃業・休業届けが出された卸売業の件数を表しています。2007年以降最低でも年間2500件以上の卸売業が休廃業していることがお判り頂けるかと思います。
なぜ、卸売業の廃業件数はこれほどまでに多いのでしょうか。
これにはおそらく、
・EC化によって流通の短縮化が起きている
・卸売業は事業の性質上承継が難しい
という2つの大きな原因があるかと思います。
オンライン上で商品を販売するEC(電子商取引)の市場規模は年々増加しており、経済産業省の調査によれば2010年から2017年の8年間でECの市場規模はなんと2倍以上に成長しています。
ECの普及によって、多くのメーカーやブランドがインターネットを用いて直接商品を販売するようになった結果、流通の短縮化が起こっています。
食品や医薬品などといった市場規模の大きな業界はITの導入が遅れているため、まだEC化は追いついていませんが、遅かれ早かれこれらの業界にもEC化が普及し、流通の短縮化が起こることは明白です。
そして、こういった業界の動向から、卸売業の廃業を検討する経営者は多いです。
また、中小企業の場合、多くの業界では親から子へ会社を受けわたす「親族間事業承継」が多いのですが、卸売業の場合はその親族間事業承継も難しいです。
卸売業において一番重要な経営資源は、技術でも人材でもなく、販売先や仕入先との関係性です。
そして、こういった人脈は一朝一夕で引き継ぐことは難しいので、他の業種と比べ卸売業の場合は、事業承継が難航するケースが多いです。
そのため、このような市場の状況で、大変な思いをしてご子息に卸売業を引き継ぐくらいであれば、自分の代で廃業してしまおうと決断する経営者の方が多いようです。
廃業という言葉に対してネガティヴな印象を持つ方は多いですが、私は廃業は業界の未来を見通すことに成功した結果のように感じます。廃業という行為に負い目を感じる必要は一切ありません。
それでは、次は具体的に卸売業を廃業するまでの手順をご説明しますね。
なお、ここでは卸売業の廃業に関する法的書類の厳密な書き方ではなく、廃業に至るまでの大まかな流れをご紹介したいと思います。
卸売業を廃業するまでの具体的な3つの手続き
廃業手続きを取る前に、まずあなたが経営されている卸売業の資産と負債を計算してみて下さい。
売却して資産化できる機材や買掛金をはじめとした負債を全て計算して、資産の方が負債よりも大きければ倒産ではなく廃業を選択することができます。
そして廃業手続きは
①廃業スケジュールを綿密に立てる
②買掛金をはじめとした資産と負債の整理
③解散確定申告と清算確定申告をおこなう
といった3つのステップで進めていきましょう。
①廃業スケジュールを綿密に立てる
これは、全ての業種において言えることなのですが、いつ倉庫を解約してどのタイミングで従業員に会社の解散を伝えるか、という廃業スケジュールの作成は綿密に行いましょう。
杜撰なスケジュールのまま廃業を進めてしまうと、まだ営業を行う必要があるのに倉庫は解約してしまったため仕事が行えない、といったトラブルも起きてしまいます。
また、卸売業の場合は特に会社の解散についてじっくりと時間をかけて従業員に説明する必要があります。
卸売業では従業員が仕入先や販売先と密に繋がっていますので、納得のいかないまま会社の解散を告げられた場合、自分の給料を確保するために従業員が売掛け金を販売先から勝手に回収して自身の給料に当ててしまうケースがあります。
そのため、従業員への説得や説明のための期間は、予め長めに設けておいた方が良いでしょう。
②買掛金をはじめとした資産と負債の整理
廃業スケジュールを綿密に立てたら、次は資産と負債の整理を行います。
卸売業に特有の資産と負債は以下のようなものが上げられます。
(1)買掛金
卸売業を廃業するにあたって、この買掛金の支払いが最も厄介です。
買掛金を通常通り支払うことができるのであれば問題はありませんが、支払いが難しい場合は必ずその旨を仕入先に伝えた方が良いです。
特に、仕入先と販売先が繋がっている場合は、こちら側の支払いが遅れると、仕入先が販売先に直接買掛金の支払いを請求するケースもありトラブルに発展してしまいます。
そのため、買掛金の支払いが難しい場合は必ずその旨を仕入先に伝えましょう。
(2)倉庫
貸倉庫で卸売業を運営している場合問題はありませんが、自社保有の倉庫がある場合はそちらも売却する必要があります。
しかし、不動産の売却には時間がかかる上一度売却してしまうとそこからの営業はできなくなってしまうので、きちんと計画を立ててから売却する必要があります。
③解散確定申告と清算確定申告をおこなう
ここからは専門的な内容になってしまうため詳しくは述べませんが、廃業にあたっては解散確定申告と清算確定申告という2回の確定申告を行う必要があります。
解散確定申告とは、事業年度の開始日から解散日までの期間の確定申告のことなので、本質的には普段おこなっている確定申告と何ら変わりません。
一方、清算確定申告は資産と負債の整理を終え残余財産が確定した後に行う確定申告のことを指します。
このように、廃業のためにはこうした税務面の手続きも必須となってきます。
卸売業の廃業には相当の手間がかかる
ここまで、簡略化して卸売業廃業までの具体的な流れをお伝えしてきましたが、卸売業を廃業するためには相当の手間がかかります。
今回ご説明したのは、卸売業を廃業するための大まかな流れです。
実際に卸売業を廃業しようと思うと、面倒で複雑な書類をミスなく記入する必要があります。
そして、廃業手続きが面倒に感じる方には、卸売業を売却してしまうという方法がおすすめです。
うちの卸売業は赤字だから売却できるはずがない…と思い込んでしまっている方も中には多いかもしれませんが、赤字の卸売業でもきちんとした価格で売却することができますし、負債が資産を上回っていても場合によっては売却可能です。
廃業に比べて売却は圧倒的に楽な上金銭的なメリットも大きいです。
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