・インターネットショップの影響を受けて小売業の経営が厳しくなったので廃業したい
・小売業を経営している父親が急に亡くなってしまったため廃業手続きをしたい
このような理由で小売業の廃業を検討されている方に向けて、今回は小売業を廃業するまでの具体的な手続きとその時の注意点をご紹介していきたいと思います。
とはいえ、小売業を廃業するためには、在庫処分や店舗物件の解約だけではなく、複雑な法的書類の提出が必要です。
そのため、小売業の廃業を検討されている方は、一度小売業を売却することも視野に入れてみて下さい。
売却ならば廃業と違い、小売業を簡単に手放すことができますし、何よりも金銭的なメリットが大きいです。
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この記事の目次
小売業の廃業件数の推移を表したグラフ
このグラフは、中小企業庁が発表しているデータを用いてわたしが作成したグラフです。
このグラフは日本国内において廃業・休業届けが出された小売業の件数を表しています。2007年以降最低でも年間3000件以上の小売業が休廃業していることがお判り頂けるかと思います。
また、2011年以降その休廃業は年々増加している様子がグラフから見てとれます。
なぜ、小売業の廃業件数はこれほどまでに多いのでしょうか。
これにはおそらく、
・量販店の台頭によるシャッター商店街化
・ネットショップの普及
という2つの大きな原因があるかと思います。
これは今にはじまった現象ではありませんが、大型量販店によって残念ながら多くの商店街がシャッター商店街化しています。
そのため、商店街からのついで買いを狙った集客が難しくなり、小売業の廃業件数もそれに比例するように増加しています。
また、最近ではAmazonをはじめとしたネットショップの影響も無視できないほど大きくなってしまっています。
そして、洋服をネット上で販売するZOZOや靴をネット上で販売するLOCONDOなどの登場で、今までの常識では直接店舗で購入することが主流だった商品でさえネットショップの波に飲まれていきました。
そのため、このような状況でご子息に小売業を引き継ぐくらいであれば、自分の代で廃業してしまおうと決断する経営者の方が多いようです。
廃業という言葉に対してネガティヴな印象を持つ方は多いですが、私は廃業は業界の未来を見通すことに成功した結果のように感じます。廃業という行為に負い目を感じる必要は一切ありませんよ。
それでは、次は具体的に小売業を廃業するまでの手順をご説明しますね。
なお、ここでは小売業の廃業に関する法的書類の厳密な書き方ではなく、廃業に至るまでの大まかな流れをご紹介したいと思います。
小売業を廃業するまでの具体的な3つの手続き
廃業手続きを取る前に、まずあなたが経営されている小売業の資産と負債を計算してみて下さい。
回収予定の売掛け金や、売却して資産化できる在庫商品などを全て計算して、資産の方が負債よりも大きければ倒産ではなく廃業を選択することができます。
そして廃業手続きは
①店舗物件の解約時期を軸に廃業スケジュールを綿密に立てる
②在庫をはじめとした資産と負債の整理
③解散確定申告と清算確定申告をおこなう
といった3つのステップで進めていきましょう。
①店舗物件の解約時期を軸に廃業スケジュールを綿密に立てる
多くの場合、店舗物件は自社所有のものではなく賃貸物件だと思います。
そして、廃業スケジュールはその店舗物件をいつ解約するかということを軸に立てていくのが良いです。
店舗物件を解約する際は、前もって大家に通達する義務があります。
そのタイミングは契約によって異なるのですが、ここでは解約の3ヶ月前までには通達の義務があるものとします。
その場合、3ヶ月前には大家や従業員に通達し、残りの2ヶ月で在庫処分セールを行い、残りの1ヶ月で残った商品や機材の処理を行うというように店舗物件の解約タイミングを軸に廃業スケジュールを立てていくことが大切です。
ただ、売却に時間をかかる資産を店舗で抱えている場合は、その資産を処理してから廃業スケジュールを立てた方が無難です。
②在庫をはじめとした資産と負債の整理
廃業スケジュールを綿密に立てたら、次は資産と負債の整理を行います。
小売業に特有の資産と負債は以下のようなものが上げられます。
(1)店舗の商品
小売業を営んでいる会社の代表的な資産といえば、店舗の在庫商品です。
この店舗の在庫商品は、同業にしか売却できない商品ではない限り、閉店セールなどを開催して一気に売りさばいてしまうことが一般的です。
また、売れ残りが出ないようにスケジュールに余裕を持って閉店セールを計画することも大切です。
(2)店舗物件
多くの場合小売店舗は賃貸物件ですが、物件を自社所有している場合はそちらも売却する必要があります。
不動産の売却には時間がかかる上一度売却してしまうとそこから店舗の営業はできなくなってしまうので、きちんと計画を立ててから売却する必要があります。小売店舗が賃貸物件の場合は、解約するだけでOKです。
③解散確定申告と清算確定申告をおこなう
ここからは専門的な内容になってしまうため詳しくは述べませんが、廃業にあたっては解散確定申告と清算確定申告という2回の確定申告を行う必要があります。
解散確定申告とは、事業年度の開始日から解散日までの期間の確定申告のことなので、本質的には普段おこなっている確定申告と何ら変わりません。
一方、清算確定申告は資産と負債の整理を終え残余財産が確定した後に行う確定申告のことを指します。
このように、廃業のためにはこうした税務面の手続きも必須となってきます。
小売業の廃業には相当の手間がかかる
ここまで、簡略化して小売業廃業までの具体的な流れをお伝えしてきましたが、小売業を廃業するためには相当の手間がかかります。
今回ご説明したのは、小売業を廃業するための大まかな流れです。
実際に小売業を廃業しようと思うと、面倒で複雑な書類をミスなく記入する必要があります。
そして、廃業手続きが面倒に感じる方には、小売業を売却してしまうという方法がおすすめです。
うちの小売業は赤字だから売却できるはずがない…と思い込んでしまっている方も中には多いかもしれませんが、赤字の小売業でもきちんとした価格で売却することができますし、負債が資産を上回っていても場合によっては売却可能です。
廃業に比べて売却は圧倒的に楽な上金銭的なメリットも大きいです。
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